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MASHUP INTERVIEW「フェスに挑戦し続ける理由」ONE MUSIC CAMP / ARIFUJI・佐藤大地
MASHUP FESTIVAL kobe'26をつくる、7つのフェスのオーガナイザーたち。
それぞれが異なるカルチャーや価値観を持ちながら、この祭りにどんな想いを込め、どのような景色を描こうとしているのか。
この連載では、MASHUP FESTIVALをつくる"人"に焦点を当て、その素顔と哲学に迫ります。
第4回は、キャンプ野外フェス「ONE MUSIC CAMP 」と「ARIFUJI WEEKENDERS 」2つのフェス主催メンバーである佐藤大地さんに話を聞いた。
会社員を続けながら17年間、野外フェスを創り続けてきたその哲学とは。
会社員をしながら、野外フェスを17年
「普段は会社員をやっているんですけども、それとは別に2010年から野外フェスをやりたいというのがあって、ONE MUSIC CAMPというキャンプ野外フェスを兵庫県三田市で始めました。なんだかんだそれから17年の歳月が経ったんですけれども」
佐藤さんは今もなお会社員を続けながら、他3人の主催メンバーとともに、数千人規模のフェスを開催している。
イベント業界を見渡しても、なかなか見られない異色のオーガナイザーだ。
4〜5年前からは新たに三田市の有馬富士公園で「ARIFUJI WEEKENDERS」も立ち上げ、2023年に初開催を迎えた。
2023年からスタートした「ARIFUJI WEEKENDERS」は兵庫県最大の都市公園で開催。豪華なラインナップと広大な敷地で大人もこどもも楽しめる開放感が魅力だ。< Photo:エモトココロ >
ONE MUSIC CAMPの始まりは、決して”続けること前提”ではなかったという。
「続けるというよりは、とにかくやろう、みたいな感じで始まったという方が強くて。1回目やってみたら全然お客さんが来なかったんですけど、少ないなりに来てくれた人たちと僕らにとってはめちゃくちゃいいイベントだったなって手応えがあって。それでもう来年もやろうという感じになって、そこからずっと続けてたらお客さんがどんどん増えて、大きくなっていった感じですね。」
初回のONE MUSIC CAMP 2010では、数人のお客さんと友人しかいなかった。
ONE MUSIC CAMP 2014からソールドアウトが続くようになったという。< Photo:Shiho Aketagawa >
フジロックと関西の新たなムーブメント
フジロックの創始者である日高正博氏の著書「やるか FUJI ROCK」(出版:CEメディアハウス)は佐藤さんのバイブルになっているという。
きっかけは29歳のとき。
結婚し、子どもが生まれるタイミングで、「これから自分がどう生きていくか」を真剣に考えていた時期だったという。
「読んでた本に、絶対に自分の本当に好きなことをやった方がいい、みたいな事が書いてあって。じゃあ自分の本当に好きな事って何だろうって考えていた時期に、フジロックに行って、それがあまりにも衝撃だったんです。これが俺の答えやったんやって思って。つまり、野外フェスをやるってことなんや、俺の本当にやりたいことは、って気づいて」
資金もノウハウも全くない状態だったが、友人たちに相談するとすぐに賛同してくれた。
そして2010年、兵庫県三田市でキャンプイン野外フェス「ONE MUSIC CAMP」が始まった。
当時、野外フェスを個人で主催している例は極めて少なかった。
一方で、関西の同世代のDJやバンドたちが、それぞれ好きなスタイルでパーティーを開いていた時代でもあったという。
「当時僕はタワーレコードで働いていたんですが、そこに集まってたメンバーが、DJやってます、バンドやってますって感じで、好きな音楽を中心にしたパーティーをちょこちょこやっていて、みんな仲良かったんですよ。 他にも関西ではneco眠るとか、昨年のMASHUP FESTIVALに出演してくれたONIさんとか、マッカーサーアコンチとか、面白いバンドが自分たちで企画してイベントをやっていたりもして。 フジロックというビッグバンの後に、そういうクリエイティブな人たちがわらわらと関西で何かやり始めてた時代——僕らもその中のひとつだった、という感じかもしれません。 野外フェスをやっている人は確かに少なかったですけど、色んなカタチのイベントがあって面白かったですね。」
フェスはファイナンスゲームではない
会社員とフェス主催者、二つの顔を長年にわたって両立させてきた佐藤さんには、独自の仕事観がある。
「どっちが上とか下とかっていうものでもなくて。フェスは仕事で、会社員はある種、生活するためのお金を回すファイナンスみたいに思ってるんですよ。 自分の中で”仕事”っていうのは一般的な意味である”生活のための稼ぎ”とは違うと思っていて、金になろうがなるまいが、とにかく自分が一番やりたいことを突き詰めるってことで、結果的にそれが誰かの価値になることもある。ファイナンスの方は、資本主義のルールで求められていることに応えて収入を得て、支出を抑えるバランスゲームというか。」
ライフワークとライスワーク、という言葉を借りるなら、まさにフェスがライフワークで、会社員がライスワークだという。
だが、それは決して両方とも本気で取り組んでいないという意味ではない。
「売れてるアーティストのように、やりたいこと”だけ”で食えた方がいいよねって、昔は僕もそう思ってたんです。 でもそうじゃない、会社員の世界もあるし、家族や友達もいる。フェスのボランティアスタッフのコミュニティも大きくなってきている。一つに全てを賭けるんじゃなくて、そういう多様な世界も大切にしていくことで、結果的に「やりたいこと」も突き詰められるんじゃないかって。だってそうじゃないと、やりたいことがいつしかファイナンスゲームになってしまうかもしれない。夢中でやってたのに、そこに世間の物差しやお金のルールを持ち込まれたくないじゃないですか」
そして、この二つは決して切り離されたものではなく、互いに影響を与え合っているという。
「会社員のほうにも、フェスでやってることの経験値はすごくフィードバックされてる実感があるんです。全くの他業種ですけど会社で得た知識がフェスの運営にも活きてる一方で、野外フェスを主催するという、他の人がまずやったことがない経験自体が”会社員ワールド”でもすごく役に立ってると思います。」
家族や趣味、フェスを取り巻くコミュニティも含め、人生における複数の大切なものを磨いていく。
そうすることで、結果的に自分が突き詰めたいことを、より良い形で追求できる——そんな考え方が、佐藤さんの根底にはある。
MASHUP FESTIVALは少年ジャンプみたいにしたい
MASHUP FESTIVALに参加するきっかけは、シンプルだったという。
「始まりはやっぱりMASHUP FESTIVALを主催する大原くんが誘ってくれたから、ということに尽きるんだけどね。この人と一緒にやったら面白いのかもな、という予感があるかどうか。そういうものだと思いますね、最初のはじまりっていうのは」
その先に何を実現したいのか。
そう尋ねると、佐藤さんは自身が主催するフェスとの違いを引き合いに答えてくれた。
「ONE MUSIC CAMPやARIFUJI WEEKENDERSは、自分たちのチームがバンドのようにやりたいことを妥協せずやろう、というベクトルなんです。でもMASHUP FESTIVALはいろんなチームの人たちが関わっている。だから自分たちがやりたいことを実現しよう、というより、とにかくデカくしたいよね、と。」
昨年ONEチームが手掛けたMASHUP FESTIVAL kobeのステージ < Photo上段:ITSUMI OKAYASU / Photo下段:小林まり >
その考え方に影響を与えたのが、あるクリエイティブディレクターのインタビューだったという。
ユニクロのロゴ、Hi-STANDARDのジャケット、セブン‐イレブンのコーヒーマシンのデザインなど、多岐にわたる仕事を手がけた佐藤可士和氏の言葉だ。
「彼があるインタビューで、『スケールはデカければデカいほどいい』って言ってたんです。この考え方が面白いなと思って。すごくこだわりのあるデザインをする人だから、てっきり小さい世界で完璧なものを作りたいタイプかと思ったら、真逆のことを言っていて。自分のこだわりやクリエイトしたものが、広く世界に良い影響を与えるほうがいいに決まっているというようなイメージなのかなと思うんですけど、この考え方に影響を受けているところはありますね」
もちろん、自身のコアな部分では、必ずしも「デカい方がいい」と思っているわけではない。
ONE MUSIC CAMPについては、むしろ大きくしすぎない方がよいと思っている部分もある。
一方で、他のチームと力を合わせるMASHUP FESTIVALのような場では、スケールを大きくするほうが面白さが生まれるのではないかという。
「一つのフェスだけではできないぐらい、デカくなったら面白いなと思うんですよね。マンガで言うとONE MUSIC CAMPやARIFUJI WEEKENDERSは少数精鋭のチームで創り上げる『連載作品』っていう感じなんだけど、MASHUP FESTIVALは『週刊少年ジャンプ』 そのものみたいなプラットフォームになって、その中で面白いやつらが好き勝手やってるみたいな感じ。もちろんウチがその中で一番人気の作品になるつもりですけど笑」
超個人的 2026上半期佐藤アワードノミネートは、フェスと本とマンガから
最後に、最近気になっているものを尋ねると、佐藤さんが真っ先に挙げたのは音楽アーティストではなく、「六感音祭 」というMASHUP FESTIVALに参加しているフェスだった。
「身内ネタになっちゃうけど、『六感音祭』に行って、すごい良かったなって思ったんですよ。ONE MUSIC CAMPに近い、インディー系の面白いアーティストを集めて出すこだわりをすごい感じていて。行ってみたら、俺らより1世代、2世代若い人たちがたくさん来てたんです。そういう若い子たちが、主催がこだわって創ったフェスのファンとしてついてるっていうのが、素晴らしいなと思いましたね」
『魚が存在しない理由』(著:ルル・ミラー / サンマーク出版)
もう一つ、印象に残っているのが1冊の本だという。 「ルル・ミラーっていうサイエンスジャーナリストが書いた『魚が存在しない理由』っていう本があって。これが良かったですね。ジャケット(装丁)までめちゃくちゃかっこいいんですよ」
生物分類学について書いた本でありながら、堅苦しさがなく小説のような読み心地で、著者自身の物語も織り込まれているという。
「タイトル通り、魚というのは分類学的には存在しないのである、という不思議な科学的事実にたどり着くまでのストーリーなんですけど、その中に生物学者の伝記があり、哲学もあり、私小説でもあるっていう多様なテーマがミックスされています。生物分類の歴史を読んでいたはずが、気づいたらアメリカの社会的な問題に鋭く切り込んでいくという、かなり深い本でしたね。こういう新しい世界のインプットが、フェスという大きなアウトプットにつながると思ってます。」
「マンガもいつも読んでて、最近ハマってるのは『これ描いて死ね』と『ガールクラッシュ』。音楽だと、ローリングストーンズの新作が最高でしたね。80歳超えてるんですよ?信じられない。」
MASHUP FESTIVALという場に彼が持ち込むのは、「デカくしたい」というシンプルで力強い予感だ。
今年のMASHUP FESTIVAL kobeで、ONE MUSIC CAMPとARIFUJI WEEKENDERSがどんな相互作用を生み出すのか、注目してほしい。
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