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MASHUP INTERVIEW「若い世代を、怖いと思われる存在に。」MUSIC ZOO WORLD・上田佑吏
MASHUP FESTIVAL kobe'26をつくる、7つのフェスのオーガナイザーたち。
それぞれが異なるカルチャーや価値観を持ちながら、この祭りにどんな想いを込め、どのような景色を描こうとしているのか。
この連載では、MASHUP FESTIVALをつくる"人"に焦点を当て、その素顔と哲学に迫ります。
第2回は、神戸・三宮のライブハウス「太陽と虎 」をはじめ、 レコーディングスタジオ「Studio UMI 」や 音楽レーベルを運営する株式会社パインフィールズ、代表取締役の上田佑吏(うえだゆうり)さん。
26歳、2代目社長という肩書き
「株式会社パインフィールズ代表取締役の上田佑吏と申します。よろしくお願い致します」
パインフィールズは、神戸・三宮のライブハウス「太陽と虎」を中心に、レコーディングスタジオ、音楽レーベルを運営する会社だ。
MASHUP FESTIVAL kobeには「MUSIC ZOO WORLD(ミュージックズーワールド) 」という、「太陽と虎」の周年イベントから始まったフェスとして参加している。
「音楽以外で言うと、月のうさぎ っていう鉄板焼き屋さん、居酒屋さんもやってたりとか、 とらうま製作所 でグッズやTシャツを作ったり、アーティストさんに関わるものを作ったりもしています」
上田さんは現在26歳。
会社を立ち上げたのは実の父・松原裕さんだ。
名前の由来を尋ねると「松原がパインのフィールズ」——本人いわく「田舎の中小企業みたいな」名付けだという。
その父は7年前、癌で亡くなった。以来、上田さんが2代目として会社を継いでいる。
「代表取締役っていうラベルを勝手に貼られたって感じ。
会社を立ち上げたわけでもないし、財務も何もわかってない状態で、まあ昔の徳川政治みたいな、とりあえず頭に立ってるだけ、みたいな」
学生時代に社長という肩書きを背負う事になった上田さんが、その実感を持てるようになったのは、社長6年目を迎えた「ここ最近」だという。
「父が立ち上げた理念を、自分の中でゼロから持ってない状態で代表になっても、芯がないというか、すぐブレちゃうというか。それがずっと自覚に繋がってなかったりもして」
先代がつくった土台の解像度が上がってきたからこそ、そこに自分の色をどう乗せていくかを考えられるようになった、という5年間だった。
「若い世代を脅威に思ってもらいたい」——ライブハウス経営者としての視点
上田さんが今、強く意識しているのは20代のバンドシーンを盛り上げることだ。
「同世代、自分自身もまだ20代なので、色を出すって考えた時に、40代とか30代とか上の世代の人に、若い奴らが怖いなって思ってもらえるシーンをつくるのがすごく大切やなと。脅威に思ってもらいたいなみたいな」
ライブハウス界隈では近年、ロックバンドの高齢化やメンツの固定化が話題になりがちだ。
バンドを始める人口自体も減り、ソロで活動できる時代の流れもある。
そんな時代だからこそ、太陽と虎に出たことのないアーティストを積極的にブッキングし、20代のシーンをバックアップしていきたいという。
比較対象として名前が挙がったのが名古屋だ。
ジャンルを問わず若者主体のライブシーンが根強く残っているという印象を、上田さんは客観的な観察として語った。
神戸との違いについては、独自の分析も披露してくれた。
「神戸って若い子たちがライブシーンを養える場所はあるけど、それをステップアップさせる場所が少ないんかなと。
名古屋にはダイヤモンドホールやZeppみたいな1000人、2000人キャパの箱があるけど、神戸にはそれがない。
小さいライブハウスで満員にして、じゃあ次はZepp目指します、っていうストーリーが描きにくいのが、ある意味神戸の弱さかもしれない」
2028年にはメリケンパーク近くのウォーターフロントエリアに新施設ができる計画もあるといい、「そういう場所で活躍してもらえるアーティストが増えたら」と、神戸の音楽インフラそのものへの期待も語ってくれた。
なぜMASHUPに参加するのか——「ライブハウスの熱気を野外で」
MASHUPというフェスの特異性について、上田さんはこう表現する。
「今までに前例のない形というか、多くのオーガナイザーたちが集まって、それぞれが色を出していく。去年も話に上がりましたけど、ちょっと万博のパビリオンっぽいイメージの中で、僕らはライブハウスの熱気溢れる感じ、非日常的なところを、野外だけどライブハウスみたいな感覚で体感してもらえるような作り込みをしていきたい」
参加の目的として具体的に挙げたのが、ターゲット層の掘り起こしだ。
「MASHUPのターゲット層って30代、40代のイメージで、昔ライブハウスに行ってたなっていう世代の人が多いと思うんです。僕らが参加することで、懐かしいなと思いながら、また実際にライブハウスに足を運んでもらえる。そういうきっかけができればすごくいいなと」
もう一つの魅力として語ったのが、普段は交わらないオーガナイザー同士のブッキングが混ざり合う面白さだった。
「他フェスのONE MUSIC CAMPとかITAMI GREENJAMがブッキングするようなアーティストさんって、なかなか僕らも交わることがない。
そのマッシュアップされている感じっていうのは、個人的にもすごくワクワクしてます」
その背景には、神戸という都市そのものの構造的な課題への危機感もある。
「固定の層に固定のバンドをぶつけるやり方って、結構限界があると思ってて。神戸はそもそも絶対数が少ないし、正直大阪に見に行く人が多い。だからジャンルをまたいで、そもそもの絶対数を増やしていく方向を頑張らないと厳しい。そこにMASHUPで寄与できたらなと思っています」
超個人的 2026上半期ゆうりアワードは「フリージアン」と「ITO→たのし」
最後に、お気に入りアーティストを尋ねると、上田さんが名前を挙げたのは、太陽と虎で長年活躍してきた「フリージアン 」というアーティストだ。
「僕たちがカミング神戸を通して前夜祭をやる時とか、大事な時にはやっぱり立ち上がってくれる存在で。毎年、太陽と虎でワンマンをやってくれたり、僕らが次のステップに上がる挑戦をする時に、太陽と虎を主戦場にしてくれてる。個人的には、MUSIC ZOO WORLDのオープニングもやってもらってて、心の盟友ぐらいに思ってますね」
もう一組、ニューカマーとして名前が挙がったのが「ITO→たのし 」という神戸のアーティストだ。
「もともとは太陽と虎のスタッフだったんですけど、これがやっぱり一番、アワードノミネートでもありニューカマーでもある。すべてを楽しくしてくれる愉快なおじいさん、というか」
この"永遠の新人"は、8月1日の大型イベントでHump Backらと同じステージに立つといい、最近は活動エリアを大阪にも広げているという。
「ぜひ一回聞いてほしいですね。中毒性もあるんで」
見つかってほしいけど、まだ誰にも知られていてほしくない——そんな複雑な愛着を滲ませながら、上田さんは笑ってこの対談を締めくくった。
ライブハウス経営者としての矜持を持ちながら、MASHUP FESTIVAL kobeという非日常空間に何を持ち込むのか。
今年のMUSIC ZOO WORLDで、上田佑吏が仕掛ける"熱気"にぜひ注目してほしい。
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